sieca

2022/09/24 16:12


先日、台風が近づいているなか、『こうふのまちの一箱古本市』に出店してきました。早朝から大雨が続いていたけれど、搬入の頃には小雨になって、お昼には晴れ間も見えるような天候に。一日中雨予報だったのにもかかわらず、過ごしやすい天気に恵まれました。寂れたアーケードもその日は多くの人で賑わいを見せ、老若男女問わず様々な人が本を手に取り、言葉を交わして笑顔になるその光景が、僕には和やかに映りました。




本を好きな人が集まって、本の話をする。ただそれだけのことが、いままで「本と自分」という閉じた関係性を大きく広げてくれるように感じます。本の紹介をして共感を得たりすることは様々な媒体でありますが、対面できちんと本を手にとって話をするというのは、とても難しいこと。本が好きな気持ちを素直に表現していい場所であり、「本が好き」という、ひとつのベールを予め共有して人と対峙できるようになるのです。

街中を歩いていても、本が好きなのかどうかを知ることはありませんが、古本市ではどの人をとっても、本が好きなのだと知ることができます。刺青のしているいかついお兄さんも、真剣な眼差しで庄野さんの「シェリー酒と楓の葉」を見つめていました。本というひとつのきっかけがその人の内面を映し出し、普段には現れることのない成熟した一面を表してくれるように思います。そうしたなか、出展者として椅子に座って本を読んでいるだけでも、居心地のよい空間がそこにはあるように感じました。

出展者は約40名ほど。家に余った要らない本などを持ってきている人も多く、漫画や雑誌が並んでいたり、民芸書籍や文庫小説に特化している方も。僕は「古本市と言えばこういう本だろう」という安直な考えから家にあった古本を持って行ったけれど、結果的にかなり個性的であったように思いました。(けど、売れたのはわりにカジュアルな本でした)

逆に言えば刺さる人には刺さってくれたようで、本好きの方には楽しんで貰えたのではないかと思っています。また、お客さんと話をしているうち、山梨県民の本需要が確かにあることを知れて嬉しかったです。(山梨って本屋が本当に少ない)お客さんのなかには若い女性客も多く、意外にも本について語ることができたのも嬉しかった。自分の好きな本ばかり並べているので、ぱらぱらとめくって貰えるだけでも嬉しいもの。学生さんですかと尋ねられたときは思わず笑ってしまって、もうすぐ30歳になることは口が裂けても言えませんでした。




とても楽しい1日でした。隣に座っていた人が知り合いで、チェス盤を持ってきていたので最後の方はチェスに興じることに。街中の公園で将棋を指すおじいさんになったような感覚です。昔将棋にハマったことがあって、最近チェスと麻雀を覚えたので、だいたい何でも遊べるようになりました。持って行った本は50冊ほど。売れたのはそのうち半分ほどでした。

足を運んでくれた人がいるかわからないけれど、本当にありがとうございました。大切に読んでいただけると嬉しいです。また次は10月29日(土)に、作家さんを招いたトークイベントを行います。僕も話をするので緊張しますが、またどこかで告知します。


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