あまいへだたり
¥1,980
詩人である藤本徹さんの詩集『青葱を切る』に次いで、2018年刊行された詩集『あまいへだたり』。
懐かしい哀愁を漂わせる情景に、その言葉の静謐さ。紙色の淡さに、その空白のリズムがその静かな佇まいを際立たせているのでしょう。
けれど、ゆっくりと読み進めていくうちに、ただ甘やかな風景だけでないことに気付いていきます。そこに混じる様々な感情。特に、心の寂しい孤独さが混じり合うことで、情景に浸るだけでなく、私たちはぼんやりと思考するのです。
お猪口に手をのばすように、ちびちびと、その言葉と感情の間に揺らめく何かを探るように。
この一冊を手に取り思いを巡らせつつも、けれど変わらない藤本さんの温かな言葉からは、私たちにいとおしい読了感を与えてくれます。
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著者 :藤本徹
装丁 :清岡秀哉
装画 :狩野岳朗