美しい街
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いつまで経っても古びない、たった一行の詩や、二行の詩。
眠らずにいても朝になったのがうれしい
消えてしまった電燈は傘ばかりになって天井からさがっている
(「いつまでも寝ずにいると朝になる」)
孤高の詩人尾形亀之助(1900〜1942)の全詩作から五五編を精選。
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戦前を生きた詩人、尾形亀之助の選詩集が夏葉社さんから刊行されました。
静けさのなかに、ぽつぽつと宿る灯は不思議と暖かく、その情景や、夜の空気に淡い記憶が、じんと心を照らしてくれるよう。
詩の余白を豊かに彩るデッサンは、同時代に活躍した画家、松本竣介によるもの。装丁の色合いもすべてが美しく、その佇まいからも、彼の詩が伝わってくるような気がします。
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亀之助の詩は、現実のどこかを恣意的に切り取った写真をベースにしているかのようである。
景色の構成をしっかりと決めたものではなく、ファインダーものぞかずにやみくもにシャッターを押してみたかのような。
つまり、書いていることはほぼ具象そのものであるけれど、その囲い方がぼんやりとしている。そこにさらに、輪郭がにじむように淡い喩えを幾重にも載せていく。
そのせいか、読んだあとの印象は、やわらかい色で構成される抽象画を見たような心地である。
(能町みね子 『明るい部屋にて』より)
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著者 :尾形亀之助、松本竣介
発行者 :島田潤一郎
装幀 :櫻井久
発行所 :夏葉社
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