水を招く
¥2,970
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干ばつの大地に、井戸を掘り水路を通した中村哲医師とその仲間たち。
ペシャワール会の現地ワーカーとして五年間共に活動した著者が、一人ひとりの懸命な日常を写し留めた写真とエッセイ
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「水を招く」は、作家自らが再発見した貴重な写真群と言えます。
2001年から5年間に渡り、ペシャワール会の現地ワーカーとしてパキスタンとアフガニスタンで活動していた中山さんは、中村哲医師とその仲間たちの姿を折々にカメラで写していました。
井戸を堀り水路を通す現場や、家族や信仰と共にある日々の表情。個人的な記録・記憶としてしまわれていたそれらの写真は、やがてその意味を変え、私たちに届けられたのです。
国籍や性別、年齢も職種も関係なく、当時一緒に仕事をしていたという仲間たち─。ここには、劇的な出来事や物語はありませんが、土地に根差して生きるひとりひとりの存在と営みが静かに写しとられ、それに真っ直ぐに向き合う写真家の眼差しが息づいています。
「水を招く」という行為や祈りは、私たちそれぞれの足元にも通うものであろうと深く響いてくるシリーズです。
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"本書に収録されている写真は、私がNGO団体・ペシャワール会の現地ワーカーとして、パキスタンとアフガニスタンで活動していた時期に撮影したものです。2006年に帰国したので、かれこれ15年以上も前の話になります。
ペシャワール会は、現地で医療活動を行っていた中村哲医師を応援することを目的として結成された団体ですが、未曾有の大旱魃(だいかんばつ)に直面したことにより、医療活動に加えて、井戸掘り、水路事業、農業と、現地での活動内容は大きく変化しました。
現地で働いていた5年間、私は仕事の合間を縫って写真を撮っていました。そこには、国籍や性別、年齢も職種も関係なく、当時一緒に仕事をしていた同僚たちが写っています。時にはやんちゃで、それこそ大いに悩ましい問題を巻き起こす連中もいましたが、みんな中村先生と志を共にし、逞しくもユーモラスに活動してきた人たちです。
彼らの奮闘は今もなお続いていて、彼らの家族や現地に生きる多くの人々の暮らしを支えています。それぞれが果たす役割は異なれども、一人ひとりが常に自分の人生を懸命に生きている彼らの姿に、中村先生の言っていた「一隅を照らす」という言葉を思い出すのです。"
── 中山博喜
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"いよいよ通水試験が開始された。最初の通水試験の時もそうだったのだが、出来上がった用水路に水が流れ込む喜びと、漏水などの問題もなく無事に水が流れるのかといった緊張が、心の中を激しく行き来する瞬間である。堰板が外され、塞き止められていた水が少しずつ用水路に広がり始める。この用水路に携わった人々が固唾を飲んで見守る中、しっかりと踏み固められた乾いた地面の上を、水がじわりじわりと這っていく。" (本文より)
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著者 :中山博喜
デザイン:大西正一
発行所 :赤々舎
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