見果てぬ海
¥4,950
海の向こう側から、はじめて自分が育った島を見た。 故郷・長崎の海を巡る旅 写真家・田川基成が自身の故郷である長崎の海を旅して撮影した写真集。
数々の島と海辺を巡り、中判フィルムに収められた81点の風景やポートレート。
海に生きる人々や、カトリック、かくれキリシタン、仏教、神道など土地に息づいた信仰。その営みや自然風景、故郷の島での生活を、船に乗り海を旅する視点を通し、アメリカン・ロードトリップの手法で一冊の写真集にまとめた。
かつてそこに存在した死者や、先祖たちの意思、土地の記憶。
15歳で故郷の島を離れてから、旅を続けてきた田川が、過去を振り返りながら目の前の海を見渡すとき、写真はその海に漂い土地に刻まれた記憶を呼び覚ます。
長崎の海や自身の人生について綴った「後記」と、被写体のインタビューやエッセイを別冊子にまとめた「撮影ノート」、計約1万9000文字の文章も収録。それぞれのページの写真とキャプションの関係性も含め、時間を読むような写真集。英訳付き。
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"人生の半分を育った島から離れて暮らした。ちょうど三十歳を過ぎた頃だったろうか。 ふと故郷の海のことをもっと知りたくなった。
私は長崎県西彼杵(にしそのぎ)半島の沖合に浮かぶ小さな島で育った。あたりの海域はリアス式の複雑に入り組んだ地形で、日本の中でもっとも離島が多い。そこは有人島が70あまり、無人島も含めると約600もの島々が点在する多島海だ。島の西の沖には、遠く五島列島が連なっている。幼い頃からその海の向こうを見続けてきた。
島々は大陸に近く、古くから様々な人間や文化、宗教が海を越えて交わってきた。仏教は中国からもたらされ、神社も各地に存在する。大航海時代には、ポルトガル人やスペイン人がこの地にキリスト教を伝えた。
そして、弾圧を生き延びたかくれキリシタンたち。この海では今もそうした信仰が混在し、共生する。人々は信じるものにかかわらず、同じその海で魚や鯨を獲り、急峻な土地を耕してきた。その営みの積層の上に、今の私たちは在る。 私は大人になったある日、はじめて目の前に広がる海を旅してみようと思った。"
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著者 :田川基成
デザイン:須山悠里
発行所 :赤々舎
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