春待唄
¥1,800
グラスアート作家である詩人は、光あふれる自然との出会い、喜びをやさしくリズム感のある言葉によって発見する。
だれもが心の奥底に潜ませている童心へ、いま一度かえり着けるように新鮮な四季の景色を丁寧に描き、励まし、祈る。
2015年から同人誌『森ノ道』などに発表した詩作品をまとめた第一詩集『春待唄』は、世界といのちの繋がりをうたう讃歌詩集。
美術評論家、武田昭彦氏の解説「すきとおる光の風景」を掲載。
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「木洩れ日を」
あたたかな
木洩れ日を
ポッケに入れて
だいじに
もって帰ろう
風向きの変わった
あの日から
季節は足早に
冬へと向かっている
たとえ
どんなに北風がつめたかろうと
君は
このあたたかな木洩れ日を
握りしめて
頰を紅くして
ふみだすのだ
あたたかな
木洩れ日を
手のひらにのせて
だいじに
もって行こう
ひとり
北風に凍えて
街角で誰かを待つ
あの小さな手のひらに
そっと渡すのだ
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著者 :市川洋子
発行 :港の人